NZガイド修行日記 PR

第15話 再会

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ネイピアを離れ、韓国人のジェームス(彼らはなぜかイングリッシュネームを持っている)と釣りの約束をしているので、500キロ離れた北島北部のコロマンデル半島を目指します。

 

5月6日

アクアロッジを出ると、針路を北に取り、コロマンデル半島へ向けてひた走ります。

海のイメージを持つネイピアの余韻を楽しむように、少しだけ遠回りをして海沿いの道を余分に走りました。

地図を載せていないので、地名と地理感覚が分りにくく、申し訳ありません・・。(地図を載せろって?)

 

まず目指すのはタウポ(内陸にあって湖を中心に賑わう観光の町)。そこへ着くまでの道のりは、山道をウネウネとなり、かなり走りにくいです。

ようやくスピードが出せそうな所へ差し掛かると、ついついアクセルを踏み込んでしまいました。

間が悪いことに、ちょうどその時、対向車線にパトカーが。

 

 

終わった。

と、思っちゃいましたよ~。うわ~、なんでこんな時に。

しかし、幸い制限速度の100キロを10キロほどオーバーしただけだったので、捕まらずに済みました。すれ違う時にパッシングをされて、指を1本立てられたので、警告ということだったのでしょう。

まあ、無事に済んだからいいや。

 

それからは、極端に安全運転を心がけるようにしました。

タウポを過ぎて、チラウを過ぎ、ついに内陸部を突破して、北部の海岸線沿いの小さな町に着きました。

コロマンデル半島は、観光地なのでスーパーなど無かろうと思い、早目の買出しを済ませることしました。

米やパン、パスタなど買った後、さらに走ります。
この辺。という感じでしか、マークされていない、いい加減な地図を頼りに宿を目指します。

本当に大丈夫だろうか・・。日没も迫ってきています。

しかし、そこはNZ。
恐ろしいほど、簡単に到着しました。
と言うより、迷いようがありませんでした。

 


バックパッカーズホテルの「BLACK JACK」
1泊20ドル也。
無料でシーカヤックを貸してくれます。

オーナーのカールが、玄関からヒョコヒョコ出てきたので、挨拶すると、「おお、話は聞いてるよ。韓国人の友達はもう来てるぜ。」とニッコリ笑いました。

ちょうどその時、カールの後方のドアが開き、ジェームスの顔が見えました。

J:「お~来たか、来たか。友達もいるから紹介するよ」

ジェームスの後ろから、ゾロゾロと3人出てきました。
エラの張ったキム、茶髪のチン(ジェンという発音に近い)、女の子のケイト。

みんなとてもフレンドリーで、NZで知り合った仲間だとのことでした。ジェームス以外は全員学生ビザで入国しており、学校の休暇を利用して遊びに来てるとのことでした。

「よ~し、とりあえずご飯を食べて、酒飲もう!」
ということになり、さっさと荷物を部屋に放り込むと、台所へ。

韓国人軍団は3人部屋を借りきっており、僕はドイツ人の男性と相部屋でした。

 


ジェームスは、きびきびした動きで肉を焼いていきます。

日本では、焼きながら食べますが、彼らはとにかく一度に全てを焼いてしまってから、皿に山盛りして食べるという方法でした。

 


さすが、焼肉の本場の国からやって来ただけあります。
とにかく美味い!
韓国式の辛~い赤いタレをつけて、野菜に包んでパクリ。

幸せ。

 


食べた後は、本格的な酒盛り。
奴ら、強い、強い。
韓国の強いお酒をガンガン飲んでいます。当然ビールも。

 

韓国と日本の話になって、それぞれの国のことについて大いに語りました。

チンは、僕と同じで英語が得意ではなく、おまけに韓国語のイントネーションが強すぎて、聞き取るのに苦労しました。

しかし、不思議なことに彼の韓国語は、意味が分るのです。実に不思議・・。彼らも大笑いしていました。

さあ、死ぬほど飲んだ後は、テラスでダベることに。
キムが何かを持ってきました。

 

 

はい、寝酒。

ありえねえ。
まだ飲むつもりかよ・・。
しかも、ゴクゴク飲んでる。

でも、断ってしまっては失礼だな、とも思い直し、ゴクゴク。頭はクラクラ。

ベッドに入ったのは、深夜1時を回っていました。
隣のベッドのドイツ人は、まだ起きていて、「やあ、随分と飲んだようだね」と笑っていました。

 

5月7日

昨日は、実に韓国式の晩餐でした。

さてさて、朝は何を食べようかなと思案していると、ケイトが、二日酔いの頭を抱えて、「タロー、ご飯食べよう。今、作ってるから。うぷっ」

おいおい、ケイト大丈夫か?
台所へ向かうと、いい匂いが漂ってきます。

日本の味噌汁のようなスープが鍋に入っており、その中へインスタントラーメン(袋に「辛」という字が見えました)の麺だけを放り込みます。

へえ~、美味そうだなあ。

しかし、その直後・・。
何やら真っ赤な物体を大量に投入しました。
美味そうな鍋が一瞬にして真っ赤っか。

 

辛そう。

こいつらマジで朝から、こんなに辛いのを食べるのか?
だって、真っ赤だぜ?

3人とも実に美味そうに食べています。

恐る恐る食べてみると・・。
これが実に美味い!!!!!!!
辛いけど。
韓国バンザイ!

いつもは食欲の無い朝でも、モリモリ食べてしまいます。
よし、しっかり食べたので、しっかり遊ばなくてはいけません。

 

本当はカールにカヤックを借りて、沖へ繰り出す予定でしたが、風が強く、断念。
そこで、磯場へ行くことにしました。

適当な所へ駐車すると、てくてく砂浜を歩き始めました。
みんなゴツイ投げ竿を持っています。僕はフライでやるつもりです。
しかし、到着して思いました。フライじゃ無理だと。

足場の高い磯で、バックは取れないし、風は強すぎるし。
そこで、たまに彼らに道具を借りてやらせてもらうことになりました。

大きな針にイカの切り身をブッ刺して、放り投げます。
ジェームスが言うには、遠くへ投げられれば、大きな魚が釣れるとのことです。

 


最初の1匹目は、キムが釣りました。カサゴのような魚。

 


ジェームスが、メジナに似た魚を釣りました。彼いわく、こいつは刺身にすると最高だとのこと。

 


僕も釣りました。カウアイという魚で、あまり美味しくはありませんが、とにかく走るので面白い魚です。

それにしても、こんなに大きな魚がいとも簡単に岸から釣れるというのが、恐ろしい。

 


釣られた魚は、無造作に転がされ、刺身にされる順番を待っています。

真鯛もたくさん釣れました。本当に凄い国です・・。だって真鯛が簡単に岸からばっかばっか釣れるんですもの。

 


切り刻まれて刺身へと美味しい変身を遂げる魚たち。

 

さあ、かなりの量が釣れたので、そろそろ昼飯の刺身を食べましょうか。

キム:「タロー、安心しろ、ワサビも持ってきてるぜ」
やった~!久し振りに刺身が食える!同じ食文化で良かった・・。

ワサビがあるってことは、醤油もあるんだな~。なんか悪いなあ。全部用意してもらっちゃって。

太郎:「ねえ、醤油もあるの?」
キム:「もちろんさ。韓国の美味い刺身を食わせてやるよ」

何!?韓国式の刺身ですと・・。
ひょっとして・・。

 

 


やっぱり、赤いんだね

 

いや、贅沢を言っちゃいけません。彼らの好意なのです、おまけに韓国式の刺身を食べるだなんて、滅多に経験できることじゃありませんもの。

でも、正直な話、醤油で食べたかったなあ・・。
なんて、思ってたら、これが美味い!辛くて刺身の味が分らないけど、美味いんですよ。

ごめんよ、みんな、一瞬でもワガママなこと思ってしまって。

 


大収穫をぶら下げて、僕らは砂浜を歩いて宿へ帰りました。

 

さあ、宴会の準備です。
今回は、韓国式の魚介類料理を作ってくれるというので、楽しみです。

なんか、完全にお客さんになってしまった気がする。なんだか悪いので、ビールを買ってきて差し入れすることにしました。

カールが流木から作った自慢のまな板の上で、キムが包丁を振るいます。

ナタを使うように豪快に魚の頭を刎ねていきます。ガツン!という音がするたびに、カールが心配そうに覗いてきます。

カール:「おいおい、頼むから、もう少し優しく使ってくれないかなあ・・」

傷が気になるようでした。
その様がひどくおかしくて、みんなで、がっはっはっは!と笑ってしまいました。

 


僕が釣ったカウアイは、アルミ箔に包まれて、塩焼きに。

それに加えて、山のように積まれた刺身。

そして、当然のように登場する、

 


赤い料理。

最初は引いていた僕でしたが、ここ2日間で「赤い料理」を楽しみに待っている自分がいることに気が付きました。

これが美味いんですよね~。

明日には、皆それぞれ用事があるので、今夜が最後の夜となります。
昨晩のように乱暴な飲み方ではなく、しみじみと語りながら、のんびり飲みました。

国籍が違っても、言葉がうまく伝わらなくても、不思議なもので多くのことを語ることができました。

旅はいいものです。

 

5月8日

7時に起きて、朝の空気を胸いっぱいに吸いました。
ジェームスたちは、ベランダで朝の一服をしているところでした。

「おはよう」
別れの日の朝は、随分と経験してきましたが、いつでも寂しいものです。

皆、あまり口をきかずに食事の準備に掛かりました。
朝食は、いつもの赤いラーメン。

もう、この味ともお別れになります。

死ぬほど辛いですが、最後の一滴まで飲み干しました。
それを見ていたケイトが、
「寂しくなるわね」と呟きました。

 

チェックアウトの時間が近づいてきました。
荷物を積み込め終えると、皆の所へ行き、お別れを言いました。

NZに来てからというもの、握手が随分と上手くなった気がします。
がっしりと握り、相手の目を見て、
「さよなら」と言うのです。

旅は出会いと別れの繰り返し。
またの再会を誓って僕は、コロマンデル半島を去りました。

 

さあ、次の目的地は、オークランド国際空港です。
なんで空港?と思われるかもしれません。

実はですね、ロトルアで大変お世話になったトシさんが、帰ってくるのです。

トシさんは、1月でワーホリビザが切れて、一時帰国したのですが、NZに魅入られてしまい、舞い戻ってくることになったのです。

入国以来の空港に訪れました。
あの時は、随分と大きな荷物で来たっけなあ・・。などと、感慨に浸っていると、あっという間に到着時間が訪れました。

久し振りのトシさんとの再会。
姿を見ると、おお~と声を出して、お互いに喜びました。

早速、荷物をプジョーに詰め込んで、とりあえずロトルアへ向けて出発。

久し振りなので、お互いに積もる話に会話が弾みます。日本での生活はやはり忙しく、かなりのギャップに苦しんだよと笑うトシさんは、変わらぬトシさんでした。

ロトルアに着いたのは、夜の8時を過ぎていました。
とりあえず、釣具屋「オキーフズ」の主人であるマイクの家に泊めてもらうことになっています。

トシさんとの久し振りの再会を喜んでいるのは、僕だけではなく、マイクや彼の妻であるエリン、そして子供達も同様でした。

すでに晩飯は済ませてきていたのですが、エリンが作ってくれるとのことで、僕ら2人は胃袋の限界までチャレンジしました。う~幸せだけど苦しい・・。

食後は、もちろん本格的な酒。
マイクはひどく酔っ払い、明け方の5時くらいまで、飲みました。
さすがにその日の仕事は辛かったようです。

 

5月9日

これからトシさんは、マイクの家にホームステイ。

僕も誘われましたが、気ままな生活を身上とする僕は丁重にお断りしました。僕には安宿の方が合っていそうです。

ということで、馴染みの宿である「ロトルアセントラルBP」で1週間分の宿泊料を払い終えると、トシさんがいるオキーフズへと向かいました。

案の定、トシさんはスタッフをはじめ、多くの常連客から歓迎を受けていました。

日本のほかにも居場所があるというのは、なんて幸せでしょう。
ちょっと羨ましい・・。

 

コロマンデルでハマってしまった海釣りを本格的にやるために投げ竿を買うことにしました。

髭のダグに勧められた120ドルのセットを買いました。さあ、釣るぞ~。

この日は、一日中お店の中でトシさんやスタッフとおしゃべりをして楽しく過ごしました。

トシさんは、ロトルアに長く住んでいたので、友人が多くいます。日本食レストランの「リバーモンスター」へ食事を兼ねて挨拶へ行くことにしました。

僕は久し振りの和食をモリモリ食べて幸せいっぱい。
昨晩は、酒飲みマイクに振り回されたので、今晩は早く眠るとしましょう(笑)。

 

5月10日

今日は雨。適当な天気で有名なNZでは珍しく、午前中いっぱい降り続きました。

仕事を終えたトシさんがBPへ遊びに来たので、一緒にお茶を飲みながら色々と語りました。

日本では、怪宗教団体が怪しげな活動をしたり、相変わらず不景気だったりと、明るい話がありませんでしたが、でもやはり母国ニッポンの情報が聞けるというのは嬉しいものです。

トシさんは、エリンの手料理が待つマイク家へ。僕は、旅人ひしめく台所へ。

ガスレンジの前でドイツ人の女の子が日本製の袋ラーメンを持って困っていました。
「本格博多ラーメン」と書かれたパッケージをつまんで、途方に暮れています。

「どうしたの?」と声をかけると、
「あなた日本人?このヌードルの作り方を教えてくれない?日本語の説明書きじゃ分らないわ」

簡単な英語で説明すると、彼女は大袈裟に喜んで、
「やっと食事にありつけるわ」
とウィンクしました。

 

この日は、8人の大部屋で寝たのですが、夜中とてつもなく大きなイビキをかいてる不届き者がいました。隣の部屋から「いいかげんにしろ~」と怒鳴られるほどです。

参ったなあと思っていると、誰かがベッドから出た気配がした後、バシッと叩く音が聞こえました。

「いい加減にしてよ!」と女の子の声です。
どうやらイビキに参った彼女は耐えられずに引っ叩いたようでした。

日本だと、結構みんな我慢するケースが多いですが、やはり外国ですな~と妙に感動したのでした。

 

5月11日

宿で知り合った日本人の釣り好き青年「ユキオ」をオキーフに連れて行きました。

ライセンスを買ってもらい、レンタルのウエダーを手配すると、ロトルアの川へ案内しました。トシさんも、ガイドの仕事があるようで、同じ川へ。

釣果は、ヒットはあるものの、バラシ多数。ユキオは55センチのニジマスを釣ってご満悦。

 


ロトルアにあるスーパー「カウントダウン」の駐車場で見かけた、ある意味「スーパーカー」

 


こんなのが現役で走っているのが凄いです。

 

この晩は、ユキオと台所で食事をしていたのですが、とんでもないオバちゃんが乱入してきました。

「ダ~リ~ン!」と叫んで抱きついてくるのです。

地元マオリの人らしいのですが、ひどく酔っ払っていて、みんな関わり合いを避け、リビングへ退散しました。

僕ら2人は逃げ遅れてしまい、オバちゃんに抱きつかれて酒臭い息で愛の言葉を囁かれたのでした。

この日は、とてつもなく暇だったので、よっしゃトコトン話に付き合ったろうじゃないかということになり、いい加減な英語で会話を楽しんだのでした。

酒が無くなり、段々、酔いがさめてくると、オバちゃんは照れ臭そうに去っていきました。
安宿は、こういうことがあるから面白いです。

 

5月12日

ユキオは入国したてで、右も左も分らないというので、携帯電話の契約、口座開設、労働許可書の申請など長期生活に欠かせない事務仕事に付き合うことになりました。

困った時はお互い様です。将来、ユキオが誰かを同じように助けるでしょう。

夜はトシさんとタラウェラ湖へ釣りに行きました。
湖の夜釣りは、何も見えないので飽きっぽい僕には耐えられず、トシさんが無心に竿を振る中、僕は夜の森を探検して遊んでいました。

この晩は結局釣れず、すごすごと宿へ。

 

5月13日

今日は早起きして、トシさんとユキオをムルパラへガイド。

僕とトシさんは釣れたものの、ユキオは無念のバラシ。やはり重いニンフに慣れていないせいでしょう。

このままでは、消化不良ということで、ロトルアのいつもの川へ。

ここでもユキオは運に見放されており、バラシの連続。
焦って糸は絡まるし、見ていて気の毒でした。でも、まあユキオくん、先は長いのだ。焦らず気長にやりましょう~。

夜はトシさんとタラウェラ湖へ。まったく生命反応が感じられなかったので、諦めて宿へ帰りました。今日は一日中釣りをしていたので、少し疲れました。

 

5月14日

午前中はユキオの諸手続きの手伝いをし、午後からトシさんとロトルア湖へ釣り。まったく飽きずに釣りができるもんだと我ながら感心してしまいます。

これで釣れるのなら、まだしも、僕はボウズ。トシさんは1匹。

この晩は、6人部屋でなんと男性は僕だけで残りは全て金髪女性。

夢のようなシュチュエーションですが、実際は着替えなど気を遣わないといけないので、(誰か1人でも着替えそうな素振りを見せたら、さりげなく外に出たり・・)非常に困りました。

もう、絶対に嫌だ・・。

 

5月15日

この日も懲りずに釣りへ。
トシさんをガイド。

 


ロクに釣りをしないで、昼寝ばかりする僕。

 

宿へ戻ると、サオリさんという女の子がいました。20歳と若いのに、しっかりした子で、話をしていてとても楽しかったです。ユキオは、しきりに頷いて感心していました。

 

5月16日

この日の朝、僕は一度ロトルアを離れて、まだ見ぬ土地である北部海岸沿いのタウランガという町を目指すことにしました。

その近所にあるマウントマンガヌイという観光地と合わせて1週間ほどいるつもりです。それが終わったら再び、ロトルアへ戻ってトシさんと釣り三昧の予定です。

馴染みとなった宿のスタッフに「また、1週間後くらいしたら来るよ~」と告げておきました。

出発前にオキーフへ顔を出し、トシさんとダグに挨拶をしておきました。

さあ、旅の続きです。
ユキオが「ほんまにありがとうございました~」と見送ってくれます。

「頑張れよ~」と少しだけ先輩ぶって、手を振りました。大丈夫、彼も何とかなるでしょう。

こうして僕は次の目的地であるタウランガ、マウントマンガヌイを目指すのでした。