NZガイド修行日記 PR

第5話 釣れづれなるままに 

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ついに初めての鱒を手にした僕は、NZの巨大鱒を求め、愛車プジョーを駆って釣り歩くのでした。今回は、そんなお話と、生活の一部をチラリ。

そいじゃ、ま、とりあえず生活の一部を紹介しやす。

 


まずは我が愛車プジョーから。

高級車は、ここが違う!

 

其の壱・・・


カセット&ラジオが壊れている。

唄え!声高らかに!ということでしょう。

 

其の弐・・・


サンルーフも。

開くことはないサンルーフ。でも、すげえ、天井から空が見えるって、すげえ!

 


そして、革張りシート!
乗り心地最高っす~!!

でも、壊れてるなんて傍から見ただけじゃ分らんものね~。
不肖、中村、高級車に乗っております!ちなみに日本円で約25万円にて購入。NZだからできる贅沢って奴でしょうか。

 


じゃーん!
玄関前より撮影。
なんだかイイ感じっす。

プジョー最高~!!

 

続いては我が家にいってみましょうか!


庭の端より撮影。
かなりでかい家です。

というのも、釣りのお客様も泊まれるようにフィッシングロッジを兼ねているからなのです。

 


庭の向こうには羊がのんびりと草を食べてます。
かなり怠惰な生活・・

奴らは非常に臆病で、これ以上近づくと全速力で逃げ出すために遠目から撮影。

 


家を別方向から撮影。
夜には無数の星が瞬きます。

 


裏庭にいる羊。こいつは一頭でいることが多いんです。羊のくせに一匹狼です。

さあ、住まいの簡単な紹介を終えて、次は釣りのお話に移ります。

 

10月26日

さてさて。
NZ初の鱒をようやく手にし、ついに僕のエンジンが始動しました。

さあ、今日も早起きして行くぞ!と思っていたのですが、うっかり寝坊してしまいました。
それなりに疲れが溜まっていたようです。

一日が中途半端になりそうであったため、馬部さんの芝刈りのお手伝いをしたり、AAという日本で言うJAFに加入する手続き等を済ませました。

ああ、平和な時間が過ぎていく・・

空は青く澄み渡り、風は優しげでNZには春が訪れています。
昼食をとった後、ウトウトとまどろんでしまいました・・

目が覚めると、夕方5時。
と言っても、空は明るいので夕方という感じはしませんが。

階下より馬部さんの声がしました。
「中村く~ん。釣りに行こうか~!」

待ってました!このまま無駄な時間を過ごすのは勿体無いと思っていたところです。

それから二人は、家から100キロほど離れた川へ向かったのです。
僕が、以前、沈みそうになった例の川の下流域です。

 


牧場の間を蛇行しながら、澄んだ川が流れています。
今まで雑誌でしか見たことがなかった光景です。

 

牧場の中に入ると、牛のウンコを踏まないように気をつけながら歩いていきます。

NZの川は、日本と違い、魚の数はさほど多くないため、むやみやたらと竿を振らず、まず魚を探してから狙うという方法をとります。(釣りをされない方の為に簡単な解説です)

丘を越えてすぐ真下の流れに大きなニジマスが泳いでいました。

水草の上に乗るように定位し、餌を探しています。透明度が高いので、魚の綺麗な体色までもがはっきりと見えています。

馬部さんの指示に従い、少し下流から鱒の下流へと歩いていきました。

湿地を歩くわけですが、先日の恐怖体験が忘れられず、じかに歩かないで、上の写真にあります丸くモコモコした草の上に飛び移るように移動することにしました。

身軽さに自信があったので、挑戦!

一つ目の草によじ登ると、次なる移動先に狙いをつけます。そして、ジャンプ!

 

 

失敗。

飛びついた草が根元から動いたので、バランスを崩してしまい、頭から湿地に落ちそうになりました。

足元は底なし沼!と思っていたので、落ちるわけにはいかないと必死で飛び乗った草を掴みます。

しかし、これがススキのような外見で、それ以上の切れ味を持つ葉なので、握った瞬間、手をザックリ。

両手から血が流れました。
痛え!!!!!

しかし、離したいけど、離せない・・落ちたら、沈んでしまうんだ・・どうしよう。

しばらく湿地に垂直に突き刺さる格好で固まっていました。ふと、足元の泥が見えます。牛の足跡があるじゃないですか。

あれっ、ひょっとして・・

 

 

歩けんじゃん。

そうです!血まみれになるような苦痛を味わった意味がありません。
そこで注意して足元を観察。足跡を辿っていけばいいんだ!!

そうと分れば、強気になれます。
静かに落ち着いて鱒の下流へと回り込みました。

 

赤いほっぺのニジマスは、釣ってくれと言わんばかりにライズ(水面の餌を捕食する行為)を繰り返しています。

ドライフライで釣れる!プルプルと震える手で日本で愛用していた「シャア大佐」という真っ赤なソラックスダンを結びました。

ティペット(ハリス、糸のこと)は5X。本当は4Xを使いたかったのですが、水面が穏やかなので、細い方を使用。

 

まずは、下流へラインを送ります。
いきなり投げ始めると、魚がラインの影に驚いて逃げてしまうからです。
距離にして6m。釣りやすい位置です。

よし、準備は整った!
さあキャストだ・・
あれっ、あれっ・・?

 

 

引っ掛けちゃった。

ちっくしょ~、何でこんな時に。
素人じゃないんだから・・

そっと手繰り寄せて、フライを回収。魚影の濃い日本なら、諦めて次の魚を狙おうという選択もありますが、この川では、そういったチャンスが少なさそうです。

とにかく、手にしたチャンスは活かす!人生に通じるものがあるのかもしれませんね。(なんちゃって)

そして、ついに一投目。
急に風がぴゅ~っ。何!?
変な所に落ちてしまいました。幸い、水面に波が立ったので、奴には気づかれていません。

二投目。うまいこと鼻面へ行きました。しかし、フライの前に本物の虫を食べてしまいます。

ぬぬぬっ!

そして、三投目。
自分で言うのも変ですが、最高のアプローチ!
鼻面の70cm上流へ着水・・

鱒が気付いたようです。
ゆっくりと、浮かんできました。

昨日食べたアスパラガスに似ている尖った鼻先、そして頭がニョッキリ水面を割ったのです。

 

がぽおおおっっ!!

一部始終を見ていた馬部さんが静かに言いました。
「ヒット。」

 

一呼吸おいて、アワセると凄まじいファイトが始まりました。

手元のラインが一気に持っていかれます。奴は水草へ潜り込んで糸を切ろうという魂胆なようです。

させるか!と竿を立てて、リールを巻き取りました。
雑誌やビデオからでは得られなかった、鱒が持つ力強さを右手にしっかりと感じたのです。

強い!これがニジマス本来の強さなのだなあ・・

これ以上、潜られては切られてしまいますので、必死で引き寄せ、ランディング!
袖はびしょ濡れですが、鱒の尻尾を鷲掴みしました。

 


やった!手を怪我してまでもやって良かった!
最高の魚体が僕の手の中にあります。

感動、脱力、呆然・・
混沌とした頭の上には、いつも通りの大きな空がありました。

 

この日起こった事は、現実なのだろうか?
ベッドの中でそう思いましたが、手には切り傷がいっぱい。
ちょっぴり痛いですが、どうやら本当に釣ったようです。

 

10月27日

今日は、早起きして一人でムルパラへ向かいました。

昨日のような綺麗な川ではなく、人口の水路なのですが、魚はたくさんいると聞いたので、GO!

 


なるほど、ほんとの水路です。
魚なんかおるんかいな?と思いながら、覗くと足元に60cmくらいの鱒が見えました。
目が合ってしまったので、奴は猛スピードで退散!

 

火が点きました。
今までの苦労の分だけ釣ってやる!!

まずは、岸際の浅瀬で餌を探しているブラウンを探し始めました。
おっ、いるいる。
のんきに底をほじくって餌を探してます。

ニンフか・・

最初はシンキングラインのSTでウーリーバガーを引っ張るつもりでいたので、まずはフライを交換。

ラインも替えたかったのですが、フローティングラインは車に置いて来てしまった!!
しょうがない、これで釣るべえ。

ニンフに付け替え、魚を見ると、なんと今度は水面の餌だけを食べています。

なに!
このヤロー・・

仕方なくドライに結び替えました。フライはクリップルダン#16。ティペットは5X。

しかし、STのシンキングで至近距離を狙うのは厄介な作業です。それに先に付いているのはドライフライ。なんともメチャクチャな方法です。

しかし、何回目かに上手いこと決まると、ゆっくりとフライに近づき、がぽり!とくわえました。

ヒット。

竿を立てると、鱒は非常事態に気が付いたらしく、物凄い勢いで抵抗を始めました。
40cmあるかな?くらいに思っていた魚が、実は50cmほどあったので、逃がしてなるものか!とこちらも必死です。

しかし、ニジマスの強烈な走りに比べると、ブラウンはウネウネと重いだけで、糸が切られるような危機感はさほど感じませんでした。

 


頭が大きいブラウントラウト。
こんなのがドライを食べに水面を割ると、呼吸が止まりそうになります。

 

この日は、虫が良く飛んで、穏やかな日であったので釣りやすく、入国後初の7匹(ブラウン6、ニジマス1)という好釣果を残せました。万歳!

地元の親子連れもいましたが、彼らはルアー。
この国では、ルアーを真面目にする人間はおらず、レクレーション程度でしかされていません。

彼らは魚を釣るという行為よりも、休日の空気を楽しんでいるかのように見えました。
彼らの目から見れば、目の色変えて釣りまくっている東洋人が変に思えたのでしょう。

帰ろうかと、準備をしていると、白人のカップルが声を掛けてきました。

白人:「釣れたかい?」
僕:「はい、7匹も釣れちゃいました!」
白人:「おいおい、そいつは凄いぜ!君はNZ一の釣り人だよ!」

な~んて、大袈裟な賛辞をいただきました。
日本人と違って、白人はオーバーだなあ・・
でも、今日はたくさん釣れたので素直に嬉しかったです。

助手席の彼女は気だるそうに外を眺め、ついに僕には目を合わせずに終わりました。
はしゃいでいる彼とは随分対照的・・。気難しそうな女性のようですね・・

 

家に帰って一休み。
のんびりしていると、早くも7時。
日も大分翳ってきました。

すると、馬部さん。
「よっしゃ~、湖へ釣りに行こうか!」
そうです。我が家から湖はとても近いのです!

出発の時は、雨。
到着してからも雨。

でも、雨はチャンス!魚が警戒心を解いて岸際を回るからです。

 

本日、夜の部は9時くらいまでやりましたが、馬部さんがニジマスを一匹釣っただけで、僕にはアタリすら無いままに終わりました。

釣り終える頃には、雲の隙間から大粒の星が幾つか顔を出していました。

 

10月28日

先日行ったのですが、先行者がいて諦めたムルパラ方面にある川へ再釣行。

 


渓相は日本に近いです。
でも、魚がいな~い。

 

有望なポイントのみをダブルニンフを沈めて狙っていきました。
必ず釣れる!と信じて、ひたすらキャスト。
甲斐あってか、ようやくヒット。

 


かわいいサイズのブラウンでした~。

 

結局は、この一匹しか釣れず、雨が強くなってきたので、車に戻りました。

このまま帰るのはもったいないので、近隣の川を様子見しに行ったのですが、滝のような雨になり、山の中だったので帰路の安全を考えて引き返しました。

 

そして、帰り道。
元気に走っていたプジョーが、急に変になりました。
ハンドルが硬くなり、どこからかポコポコという音がします。

パワステオイルが漏れてたから、それなのかな?
その通り!ボンネットを開けて見てみると、殆ど空になっていました。

ポコポコという音は、残った僅かなオイルが沸き立ったからのようでした。
ビビりながらも、何とか家に辿り着きました。

パワステがなくても、ハンドルは切れそうなので、大丈夫だと思うのですが、ポコポコ音が気になるので、馬部さんに買い物のついでに買ってきてもらうことにしました。

9$65也。

 

今夜は、馬部さんは用事があって出かけるというので、僕一人で晩飯。
野菜スープとハッシュドポテトを食べて満腹、満腹。

 

10月29日

オイルを漏らしながら走るプジョーで、本日もブラウンを釣りに水路へ。
しかし、前回のようにはいかず、この日は寒く、そして風が強かったので、虫が飛びません。

半日、歩き回ってようやく2匹。

 


他にもう一匹、掛けたのですが、そいつは60cmクラスで、5Xの極細ではどうにもすることができずに切られました。

逆光で魚のサイズが見えず、確認しないで従来のシステムで臨んだ罰でした。

 

改めて思います。この国の鱒は強い!そして、でかい!

雨が降り始め、気温がガンガン下がってきたので、帰ることにしました。
ガソリンが無くなってきたので、途中のスタンドへ・・

 

いつものように給油口を開けようとしますが、開きません。
こりゃあ、あきまへん。ということで、必死でフタをこじ開けようとしました。

我が愛車は、日本車のように給油口のレバーで開けるのではないのです。
直接、手でフタを開けるのですが・・

 

 

開かない!

えっ、なんで?
昨日まで素直に開いたじゃん?

周りの人達が、給油口を無理矢理こじ開けている東洋人を遠巻きに見ています。
見かねたスタンドのお姉さんが駆けつけました!

姉:「給油口レバーで開けるんですよ」
僕:「ええ、ただこの車は付いてないんです。昨日まで開いていたのに・・」

二人でやっても全くダメであったので、この日は諦めることにしました。
また来ます。と一言、お姉さんに言うと、眉を上げて一つウィンクしてくれました。

家に帰って、早速、給油口を点検。
おっかしいな~、開くはずなのに。

 

 


ぺこん。

ぬぬっ、簡単に開きよって・・
さっきのは一体何だったんだ?
まあ、ぷじょーに「くじょー」を言っても仕方ないか・・

 

何だか取り留めの無いページになりましたが・・
今回はこれでおしまい。