NZガイド修行日記 PR

第7話 Mountain・「Men」

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NZ生活にも大分慣れてきました。それにしても、入国してから色々な事が起こるので、毎日が発見であり感動であります。

さてさて今回は、一体どんなドラマが待っているのでしょうか・・

 

11月14日

今日から二日間、赤十字の応急手当の講習会に参加します。助けを求めることができない山奥で大事が起こった場合、頼れるのは自分。ガイド業の必須でもあります。

朝飯を掻き込むと、車に飛び乗り、ロトルアの町にある赤十字へ向かいました。

講習会場にはすでに多くの受講者がスタンバってます。
受付を済ませると、着席しました。

さあ、講習が始まりました。
何やら講師であるマーガレット先生が、しゃべってます。例によって聞き取れません。

すると、今度は端の席から一人ずつ立って自己紹介のようなものを始めるではありませんか。

次第に順番が近づいてきます。

まじかよ、いきなり英語のスピーチかよ!
何も考えてねえぞ~。
まあ、何とかなるべえ。

そして、順番が来ました。

「ええ~、おはよう皆の衆。あたくしは日本からフィッシングガイドになるために入国しました。ごにょごにょ・・」

何とか無事にクリアできました。
たどたどしい英語でしたが、みんな笑いもせずに温かく迎え入れてくれたようでした。

ふう・・

 

マーガレット先生が、今度は紙を配り始めました。
なんだ?今度は何が始まるんだ?

どうやら簡単なゲームのようです。
受講者間の親睦を深めようという趣旨のようです。早速、数人が話しかけてきました。

この国の人々の凄いとところは、一度で人の名前を覚えてしまうことです。
先ほどの自己紹介で、すでに皆それぞれ名前を覚えてしまったようで、昔からの友達のように名前で呼び合っています。

当然、僕もTARO!と呼ばれました。

名前で呼ばれると嬉しいものです。
日本にいる時は、なぜか名前で呼び合わず、「あのさ~」などで会話をつなげていたように思います。

そんな感じであったので、名前で呼び合うフレンドリーな会話がとても楽しいです。

片言の英語を注意して聞いてくれ、笑顔でよろしくね!などと言われると、ああ、NZ人ってなんていい奴らなんだ!と思わずにはいられません。

あまり多くのことは伝えられなかったけれど、彼らの優しい心は十分に伝わってきました。

 

人工呼吸や心臓マッサージの実演タイムがやってきました。
人形を横にして一人ずつやるようです。

4,5人のグループで分れ始め、男性・女性それぞれ別の班になっています。僕も、男性班に混ぜてもらおうと思いましたが、人数オーバーなようで結局女性に混じって行うことになりました。

なんで、男女で分かれるのかなあ・・?と不思議でしたが、すぐに謎が解けました。

僕の前に寝かされた人形は・・

 

 

女の子。

同じ班のオバちゃんは、赤面した僕がおかしかったようで、僕の背中を叩いて笑ってました。

それにしても、人形なんて一種類じゃだめなのかなあ・・?
でも、それをきっかけに楽しい会話で盛り上がりました!

 

そして、次は止血の項目。
何を隠そう、僕は気が弱いので血を見るのはおろか、血の話を聞いただけで貧血を起こせるほどです。

昔、これでも一応、ボクシングをやっていたのでしたが、平気なのはリングの上だけで、練習中は人の鼻血を見てダウンしてました。

そんな僕にとっては、止血の講習なんぞ拷問もいいところです。

あっ、でもどうせ英語だし、聞き取ろうとしなければ大丈夫だろ!
そう思うと、俄然勇気が沸いてきます。

すると、マーガレット先生はおもむろに立ち上がりました。何かをするつもりのようです。

 

止血の・・

 

ビデオ上映(泣)

大変なことになりました。
そんなの見たら、間違いなく倒れてしまいます。
しかも、よりによって応急手当の講習で!

おお!いいことに気が付きました。
眼鏡を外しておけばいいのです!
我ながらナイス。

しかし・・

 

 

OH~、HELP!

声がすげえ痛そうです。
画面は見えていないはずなのに声だけで勝手に凄いシーンを想像し、気持ちが悪くなってきました。

体が熱いような寒いような独特な状態になり、脂汗が体中から噴き出してきました。

ハンカチで拭うのですが、その手も震えてきます。
我ながら情けないのですが、本当に苦手なんです。恐怖症なのでしょう。

馬部さんに気付かれたら、なんだかかっこ悪いので、気付かれないように必死で耐えました。

しかし、後ろの白人の兄ちゃんがただならぬ様子に気付いたようで、軽くこづいてくれます。

大丈夫!という意味の笑いを返したのですが、実はかなりマズイ状況です・・

そうだ違うことを考えよう!
TMCフックの型番を頭の中で呟くことにより、何とか気を紛らすことができました。

ああ、死ぬかと思った・・

それ以降は、心臓発作や毒を飲んだ場合の項目などであったので貧血を起こさずに無事にクリア。

何とか初日を終えることができました。

 

11月15日

今日も朝から講習会。
僕にとっては、応急処置の講習というよりも、英語を聞き取る方に夢中であったので、英語の授業のようでした。

馬部さんに予習をしておくようにと言われており、テキストは一通り目を通してあったので、内容は大体把握できました。でも、あとで復習しておこう・・

 

講習会が終わると、羽を伸ばしにロトルアの町探索へと繰り出しました。

郊外に住んでいるために滅多に町へは行かないので、一月近く経ってもよく分かってないんです。

雑貨屋で釣りの時に使う水筒を購入。
そして、ちょっと喉が渇いたのでコーラも買いました。

ごくごく・・ぷは~っ。うまい、うまい。

 

11月16日

入国してちょうど一ヶ月が経ちました。
早いものです。一度に多くのことが起こったので、目の前のミッションをクリアするので精一杯であり、あっという間だった気がします。

さてさて。
今日は、川の下見ということで、ムルパラの某河川へ馬部さんと行ってきました。

外観は日本の渓流そのものです。
ただ、釣り場までのアクセスがしんどいのなんのって・・

ゴルジュや深いプール、崖の高巻き・・何度も足を滑らせ、水の中へダイブしそうでした。

 


馬部さんヒット!

 


僕にも釣れました~。
この川の魚は皆、年をとっていて、頭が大きかったです。

僕は水面を意識している魚をメインに狙ったので、フライは、ソラックスダン#14、クリップルダン#16をメインに使用しました。

 

帰りは川通しで2時間ほど歩き、ようやく車に辿り着いた時には、すっかり疲れきってました。

喉も渇いたし、ビールでも飲んでいこうということになり、ムルパラのPUBへGO!
カウンターでビールを注文し、受け取ると、マオリのおじさんが近づいてきました。

見慣れない「よそ者」を酒場の雰囲気に溶け込ませてあげようといった粋な計らいでビリヤードに参加させてもらいました。

しかし、ビリヤードなんて学生の頃、2回くらいやった程度です。
僕の打った球は弱々しく転がり、狙っていたのとは違う球に当たりました。
マオリのおじさんは、あまりの下手さ加減に驚いたようでした。

「おじちゃん、ありがとう。もういいや。」と言って、他のおじちゃんらにバトンタッチしました。

PUBから出る際、みんな(パッと見、すげえ怖いおじちゃん達)、またね!という感じで笑顔とウィンクを送ってくれたのでした。

ああ、NZの人たちってフレンドリーだなあ・・

 

11月17日

前回、登場したGさん、こと五井さんが再び、我が家に遊びに来てくださいました。
「19日から山奥へ入るけど、一緒にどう?」とのお誘いに僕はすぐさまバイトしました!

NZへ行ったら、バックパックを背負って山奥へ釣りに行くんだ!と考えていたので、願ったりです。それに五井さんは、山のベテランなので、最高の同行者であり、先生です。

さあ、フライの弾数も減ってきたし、一杯作っておこうっと!
せっせと重たいニンフを巻き続けたのでした。

 

11月18日

今日は、トシさんが働いているロトルアのプロショップ「オキフィーズ」へ、アクアシールを買いに行きました。NZのハードな釣行で満身創痍となったウエダーを治療するためです。

トシさんと少しの間、話をし、店を後にしました。

その後、6日間の山ごもりに必要な食料を買いだしに行きました。
朝、晩は五井さんが用意してくださると言うので、お言葉に甘え、僕は自分の昼飯だけで良いことになりました。五井さん、ありがとうございます!

さあ、明日からは過酷な山生活が待っています。
今晩は、たらふく食べて体力をつけておくことにしましょう!

 

11月19日

朝4時に起きると、強い冷え込みに身震いしながら、ベッドからハッチしました。

一階におり、カーテンを開けてびっくり。
霜がおりてるじゃないですか!

ロトルアは、それほど冷え込まない土地で霜なんざおりないよ~と聞いていただけに驚きました。しかし、何も山ごもり初日に霜がおりることないのに・・

五井さんも霜を見て驚いてました。
ありゃありゃ。「これだと、山は相当冷え込むね。下着は水に濡れないようにしっかりと防水対策しておいてね。」とアドバイスをいただきました。

食べ物、飲み物は何とかなりますが、寒い山の中で体温が奪われると、命に関わるとのことです。

改めて山をなめちゃいかんな!と、気を引き締めました。

 

さあ出発です。
眠い目をこすり、車に乗り込みました。
そして、10分後。助手席の僕は・・

 

 

ZZZ・・

うわ~、五井さん、お許しくだせえ!寝ちまいました・・しかも、魚のように目を開けたま

そんなしょーもない僕に「シートを倒して寝てなよ」と優しく言ってくださった五井さん。仏様のようです。

たっぷり寝かせてもらったので、今度は僕が運転を替わることになりました。
目指す町までのんびりとドライブを楽しみました。

そして、川を目指します。ひたすら長い間、牧場の中の林道を走り続け、ようやく入渓点まで辿り着きました。

しかし、そこで待ち受けていたものは・・

 

雨でカフェオレ色に濁った川・・
上流に延々と牧場が続いているようで、この濁り方では当分の間、望みがありません。
仕方なく、一度、町へと引き返し、作戦を練り直すことにしました。

時間的に結構、遅くなっていたので、ロトルアまで帰らず、川に近い町のモーテルで一泊することになりました。

 


管理人のおじさんは、日本に行ったことがあるとのことで、フレンドリーに話しかけてくれました。

 


そういえば、初のモーテルです。
国内の釣り行脚をしていた時から貧乏であったので、寝泊りは車でしたからね。

 


向かいにあるバーガーショップで晩飯を買うと、モーテルに戻って作戦を練り直すことにしました。

当初の予定では、歩いて「濁り川」を下り、そこから他の川へ切り込むというものだったのですが、川底が見えないと、危険極まりないので、ヘリコプターを使って核心部へアタックすることになったのです。

五井さんがチャーターしたヘリにちゃっかり僕も便乗させてもらうことになりました。すいません、ほんと何から何まで・・

 

11月20日

8時にヘリ会社に到着し、搭乗準備。
うわ~初めてのヘリコプターだ!!

期待に胸を膨らませ、いざ乗り込みました。

 


浮き上がる時の感じとしては、エレベーターのそれです。
ふわっとして、ぐーんと力強く上へと持ち上げられる妙な感じ・・

眺めは最高!写真をビシバシ撮りまくってました!
あんなに大きな牛が、上から見ると、おもちゃのように見えます。

 


パイロットのおっさん。

 


助手席のおっさん(笑)
嬉しいと鼻の穴が膨らみます。アホです。アホ丸出しっす。
(セルフ撮影)

 

着陸するハット(山小屋)の上を旋回していると、小屋の中から二人の白人が出てきました。

ええ!こんな山奥なのに先行者!?
話してみると、彼らはハンターで鹿や野豚を狙っているとのこと。

 


この人は、ジェフ。
農場を経営していると言ってました。
朗らかで、優しいナイスガイ。

 


この人は、ヒュー。
同じく、農場を経営しているとのこと。
物静かで優しいナイスガイ。

 


このワンちゃんは、ドット。
名前の由来は、額の黒い点という話です。
とても、お利巧で人懐っこい犬です。
すげえカワイイ!!!

 


ハット(山小屋)の台所。
このハットは、「他のと比べると、清潔で快適だよ」と五井さんは教えてくれました。
水のタンクまで付いています。

 

さあ、荷物を置いて釣りにでも行きましょう。
ジェフとヒューに「See you!」と言って川へと向かいました。

 


濁り川と本命の川の合流点。
ここより上流へ釣り上がることにしました。

 


しかし、本流は水が少ないようです。

そういえば、ジェフが言ってました。
「この川は、数年前に一度干上がって、鱒が死に絶えたことがあったんだよ。そして、その次は大水が出てトドメをさされたんだ。」

随分と極端な性格の川のようです。

 

しばらく釣りをしましたが、五井さんが40cmほどのニジマスを一匹、僕は釣れずにニンフを投げる練習に終始しました。

帰って呑むべえ!という話になり、ハットへ戻りました。

 

ジェフとヒューが出迎えてくれました。
どうだった?の質問に、僕らが首を振ると、彼らは気の毒そうに頷いてました。

すると、ジェフは何かを思い付いたようで、シュラフの下から何かを持ち出しました。
これをやるから元気を出せ!というようなことを言ってます。

一体、何なのだろう・・

 

 


エロ本。

おいおい、おっさん。
少しでも荷物を軽くしなければならないバックカントリーで、なんでエロ本なんか持ってきてんのさ!!

ジェフは、「おいおい、TARO凄いぞ、これ見てみろよ!」と興奮してます。

どれどれ・・ついつい見てしまったのですが、あまりにも露骨過ぎて、感動がありません・・

さらにジェフは続けます。
「TARO,これを君にプレゼントするよ・・

 

「君には、必要なはずだ」

おいおい、おっさん。わけわかんねーよ。
そりゃ確かに僕はモテないけどさ、「必要なはずだ」と言い切られると、悲しくなるぜい。

「いらないよ。」と言うと、ジェフは笑いながらシュラフの下に戻しました。

でも、場を盛り上げようという優しいジェフの心遣いには感謝!

 

さあ、腹も減ったし、晩飯でも食いますか!
ヘリで来たので、食料や酒はタンマリあります。
出逢いに乾杯しようぜ!ということで4人でパーティーとなりました。

ジェフが、「乾杯って日本語で何て言うんだ?」と聞いてきたので、「KANPAI!だよ」と教えました。

彼は日本語の響きがとても気に入ったようで、嬉しそうに「KANPA~I」と連呼してました。

彼らは山にこもって数日経つらしく、五井さん特製の炊き込みご飯と鶏肉、ソーセージを実においしそうに食べていました。

実際、本当においしかったです!!

犬のドットも、おいしそうに鶏の骨を食べてました。
あれ?確か鶏の骨は与えちゃいけないのでは?

そのことを五井さんが英語で尋ねると、「大丈夫さ、ドットはタフだから」と返ってきました。

そういう問題じゃないだろうに・・とも思いましたが、飼い主に任せることにしました。

 

ビールやワインを手に色々な話をしました。
話せば話すほど、彼らが本当にいい人たちであることが分ってきました。

言葉がスムーズに伝わるわけでもないのに、楽しい会話ができました。
やっぱりハートなんですねえ。

 


これが猟銃。
持たせてもらいましたよ!

銃を手にするのは初めてだったので、ドキドキでした。
スコープを覗くと、遠くが良く見えます。

でも、銃って重いなあ・・

 

11月21日

朝の5時頃、ジェフとヒューが狩りに出かけました。
五井さんと僕は、そのまま寝続け、8時過ぎに起床。あんまり早く行っても、しょうがないですから。のんびりいきましょ、のんびり。

昼前に彼らは帰ってきました。
獲物は捕れなかったようです。

二人とも、僕らに「いや~、捕りたての美味い肉を調達できなくてごめんね」と言いました。

どうやら、昨日の豪勢な「五井さん料理」のお礼がしたかったようです。
なんて律儀で優しい人達でしょう!

そんな彼らと別れるのは辛いのですが、このまま、ここにいても魚が釣れそうになかったので、荷物を背負って更なる上流を目指しました。

70リットルのザックに荷物を詰め込み、ハットの扉を開けました。
さよならジェフ、ヒュー、ドット。

川原まで、ドットが見送りに来てくれます。
とても人懐っこい犬で、跳ねるように足元へじゃれてくる様はカワイイの一言に尽きますね。

いい人達に逢えたなあ・・心の底から旅の出逢いに感謝したのでした。

 

さあ、鱒を求めて歩き続けます。
しかし、水量が少なく、魚が付けるようなプールがありません。

五井さんが、途中で数匹、魚を見つけ、それを僕に譲ってくれたのですが、ヘタクソな僕は重いニンフが上手く投げられず、魚を逃がしてしまうだけでした。ああ、残念。

五井さんが、せっかく譲ってくれたのに・・
おのれの未熟さ加減を思い知らされました。

約8キロの距離を川通しに歩き、ついに次のハットが見えてきました。
ふう、着いた。

 


ここも、とても綺麗に整理されており、管理は隅々まで行き届いているようでした。

 


暖炉もあり、(ハットには標準装備されているようですが)前回利用者が、薪を用意しておいてくれています。

次の人のために・・というマナーのようですね。
素晴らしい!

 


ベッドも清潔で、内部のペンキは塗り直したばかりといった感じでした。

 

この日は、歩き疲れたので釣りはしないで、早めの晩御飯を食べて寝ることにしました。

 


前菜であるニンニクの醤油いため。
これも五井さんに教えてもらった山料理です。
疲れた時には最高です!

 


ふりかけご飯、お吸い物・・
ああ、しばらく口にしていなかった日本の味。
美味いなあ・・

 

11月22日

この日は、贅沢にも一日中、寝てました。
魚は釣れそうにないし、ゴロゴロしますか!と言う話になり、ずーっとハットの中でZZZ・・

平和だ、平和すぎる・・

入国する2ヶ月前から準備や挨拶に駆け回り、入国後の1ヶ月は生活に慣れるために必死であったので、久し振りの休養という感じです。

やっぱり人間たまには休まないといけませんな。

 

11月23日

昨晩使った食器を洗おうと、外に置き漬けにしておいたのですが、それを見て絶句しました。

なんと・・

 

 


ウンチされてる!!!!

 

ウンチの主は、ポッサムというイタチとタヌキを合わせたような小動物です。こいつらは道路でよくはねられて、ミンチになっており、それを見るたびに可哀そうにと思ってました。

慌てて、食器をウンチから解放しました!
その後、撮影したので、ブツは床の上に乗ってるわけです。

お、おのれポッサム。
ミンチを見たって、もう可哀そうなんて思わないからな!

念入りに洗った食器で朝飯を済ますと、今日は釣りをしようということで、川へと向かいました。

 

五井さんは、さっと魚を見つけてパパッと釣ってしまいます。
さすがNZに長年通われるだけあって、メチャクチャ上手いです・・

 


この魚は、激スレで何を投げても食わず、フライを何度も換えてようやくヒットしたクセモノ。

極小のフェザントテイルで釣ったとのことです。

 

よし、僕も負けてはいられません。
せっかく山奥まで来たのですから!

そして、例によって五井さんから譲ってもらったポイントへニンフをキャスト。
ヘタクソな僕には魚は振り向いてくれないようです。

投げ直すか・・

ピックアップする途中、小さな飛沫が上がりました。
何かがフライを食ったようです!

そして、次の瞬間・・リールファイト!!!!!

 

 


冗談です(泣)

五井さん、釣れました!
日本でも釣ったことが無いような極小サイズです。
#12のビーズヘッドニンフを咥えてました。脳天へ貫通してましたが。

大変申し訳ないことに魚は死んでしまいました・・
ごめんよ・・

バックカントリーと言うと、超大物というイメージが強いですが、その中で稚魚を釣るとは!ネタ的には、かなりイケてます。

今晩が山での最後の夜。
五井さんと色んな話をして、楽しい時間が過ぎていきました。

 


夜は、ロウソクの灯りだけですが、結構明るいものです。
日本製のアップルティーを飲みながら、夜は更けていきました。

 

さあ、そろそろ寝るべえという時、外で何やら物音がします。
それに人の声も。

え?こんな夜中、こんな山奥で妙だな?

白人の若いハンターが犬を連れてハットに入ってきました。
ひどく疲れているようで、口数は少なく、なにやら陰気臭い二人です。
ジェフとヒューとは対照的でした。

彼らは、晩飯を作るためにごそごそとザックの中から缶詰などを取り出しました。
何やら二人で話してます。

白人A:「なあ、おい、調理器具持ってきた?」
白人B:「いいや、お前も持ってないの?」

流しに干しておいた僕らのコッフェルを貸すことになりました。
それにしても、この兄ちゃんらは、僕らがいなかったらどうやって晩御飯を作ったのだろう・・

彼らの名前を聞いたのですが、一人はウィンダム、もう一人は・・忘れました。
4人と2匹の夜は更けていきました。

 

11月24日

白人の兄ちゃん二人は、朝から屁を連発しています。
ぶっ、ぶっ・・

 

 

ぶりっ。

おいおい、今のはマズイだろ!
心なしか、彼の動きが一瞬止まった気がしました。

狩りのお供であるワンちゃんが部屋に入ってきました。
僕のすぐ近くで寝そべり、う~ん・・と何か苦しそうに呻いています。

白人兄ちゃん:「ごめんね、今どかせるから。おい、ボス!こっちへ来るんだ!」

ボスは、面倒臭そうにヨロヨロと起き上がると、外へ出て行きました。
足を怪我しているようでした。

白人の兄ちゃんは、足の怪我を知っているようで、ボスを横たわらせ、肉球にトゲが刺さっているのかをチェック。

五井さんは、以前犬を飼っていたことがあったようで、只ならぬボスの具合を見て心配していました。

滅多なことでは犬は足を引きずらないので、恐らくトゲが刺さったなどという生ぬるいものではなく、骨にヒビでも入っているのでは?と診断。

確かにトゲが刺さっているというような感じではありません。

しかし、飼い主は何度も肉球を見ています。
何も刺さっていないことを確認すると、「ボス、よし、大丈夫だ!」バシバシ!と体を叩きました。

「ちげえ~よ、肉球じゃね~よ。」と言いたげなボスの表情。

見かねた五井さんが、「結構、重症そうだよ」と言ったのですが、兄ちゃんらは大丈夫さ!と気にもしていませんでした。

もう一匹が、ボスの身を案じてか、部屋に入ろうとしました。
途端に鋭い「Outside!(外へ出なさい!)」という声が飛びます。
びっくりした犬は、入り口のドアに強く頭を打ちつけて痛がってました。

その痛がり具合が、前足で頭をさすっており、人間臭くて思わず僕は噴き出してしまいました。

やがて彼らは狩りへと出かけていきました。
痛がるボスは、可哀そうに必死でついて行ってました・・

ハットに残った僕らは、そのままヘリの迎えの時間までゴロ寝をして過ごしました。
釣り自体は、それほどしませんでしたが、のんびりできたので最高のバカンスでした!!

 

ロトルアの家に帰り、お風呂に入り一休み。
さあ、飯でも食いに行きますか!ということになり、五井さんに町にある日本料理屋へ連れて行ってもらいました。

おお、久し振りの和食・・
とにかく刺身を食べたかったので、チラシ寿司を頼みました。
うわ~、刺身だ!刺身だよぅ~・・美味いよぅ~・・

スタッフのお姉さんらは、日本人のようで、「ワーホリですか?」と聞くと、「ええ。あなたも?ロトルアに来て、どれくらい経つのですか?」と返ってきました。

「いや~、NZには一月前に来たばっかりなんですよ」と答えると、「じゃあ、これからですね!」とベテラン口調で返ってきました。話の感じだと、すでに数ヶ月生活しているようです。

死ぬほど腹いっぱいになり、幸せを噛みしめながら、助手席へ座りました。
ああ、五井さん、本当に何から何まですいません・・
本当にありがとうございました!!!

 

11月25日

今日は、午後から宿泊&ガイドのお客さんが来る予定です。

お世話になった五井さんは、午前中でチェックアウト・・また、会いましょう!と再会を誓ってお別れしました。

 

部屋を綺麗に掃除し、客室を整えます。
暖炉の薪も新しく買ってきたし。完璧です!いつでもいらっしゃいまし。

そして、1時くらいにお客さんの菊田さんが到着しました。
荷物を置いて、軽食をとり一息つきました。
NZの日没は現在のところ9時近いです。

時間があるなあ~・・
という事で、急に釣りに行くことになりました。
いってらっしゃ~い!と言いそうになったのですが・・

 

 

「中村君、よろしくね!」

へっ!?僕がガイドするのですか?
なんと突然、予想していなかった仕事が転がり込んできました。
急いで支度を整えて、ムルパラへ!

途中で、菊田さんのフィッシングライセンスと、森林通行許可書を取りに行き、いよいよ森の中へ!初めてお客さんを乗せたプジョーは、元気よく走ってくれました。

本日の半日ガイドの川は、難易度としてはムルパラで随一なのですが、釣れればかなり綺麗なブラウンです。昼から行って先行者の影響が無いだろうとの考えから、この川を選択しました。

早速、菊田さんより先行して、魚を探し始めました。
いるいる。ブラウンが岸際で餌を探しています。

ただ、草が生い茂り、キャスティングは非常に困難。
ベテランアングラーの菊田さんでも苦戦しています。

ドライフライが数投目にブラウンの鼻面へ落ちました。
食うぞ!という瞬間、気紛れな魚は突然真下の藻を漁り始めたのです。

ぬぬ・・
キャスティングもドリフトも完璧なのに・・

何度か、そういったことを繰り返しましたが、ついにフライを咥えました!
アワセのタイミングもどんぴしゃり!
いつもなら、釣れているのですが・・なんとすっぽ抜け!

え、なんで?

 

まあ、お茶でも飲んで仕切り直しましょう。
しか~し!お茶の直後に大粒の雨が!

雷が近くでゴロゴロいってます。釣りをやるような天気ではなくなってきたので、とりあえず空が明るいロトルアへと向かいました。

しかし、ロトルアも雨が降り始め、時間も遅かったので、本日の釣りはこれで終了となりました。

菊田さん、ごめんなさい。僕の経験不足です・・

雨の中、ロトルアの我が家に着いたのは、すでに9時近く。
明日からの4日に及ぶ釣り三昧に備えて、今日は早目に就寝です。
菊田さん、お疲れ様でした。

 

11月26日

今日は、馬部さんと菊田さんが釣りに行っている間、僕はロッジの掃除や晩飯の準備に追われていました。

菊田さんの釣果は上々であったようです!
馬部さん、お疲れ様でした。さあ、ここからは僕の出番です。
まずは、ムール貝のつまみを作り、ビールを飲んでもらいました。

その間、下ごしらえをしておいた食材で調理。
カボチャのスープ、サラダ、アスパラの肉巻きデミグラスソース添え。

見栄えは、なんとかうまくいきました。
味は・・

「うまいっすよ!」菊田さんの一言で凄く嬉しくなりました!
ああ、主婦、いや主夫の喜びってやつだなあ!!!

 

11月27日

4日も釣りをする時間があるので、せっかくだからヘリをチャーターして山奥へ入ることになりました。ヘリ代は安くはありませんが、釣れればそれなりの良い魚です。

ただ、ヘリフィッシングの怖い所は、先行者がいたら、その時点でゲームオーバーということです。

ギャンブル的な要素の強い釣りになりますね。祈りながら、我々はヘリに乗り込みました。

入国して一ヶ月ほどですが、再びヘリに乗る機会に恵まれました。
今回の僕の仕事はポーター。
食料や衣類をザックに入れて担ぎます。

ヘリが、目的地近く上空を旋回すると、何やら下界にある小屋で人の気配。
目をやると、上半身素っ裸になった白人男性が、シャツを持って狂ったように振り回しています・・

何!!!先行者か!
あちゃ~、参ったなあ。

着陸後、馬部さんに話すと、「ああ、そいつは多分アランだよ」。
どうやら釣り人ではないようです。
安心しました。

荷物を降ろし終え、ヘリは去っていきました。
すると、その直後、人の声がします。

 


どうやら、この藪の中からのようです。
中央の暗がりを注意して見ていると、先ほどの白人が飛び出してきました。

 

「こんにちは!」
「おお、こんにちは!僕はアランっていうものさ」

髭もじゃのアランは、山奥で殆ど誰とも会うことなく、一人で生活しているようです。
鹿、豚、ポッサムを捕まえて、肉を食べ、毛皮を町へ持ち込んで生計をたてているとのこと。

よほど人恋しかったのでしょう。
マシンガンのように話しまくってます。
そして、そよ風が・・

アラン:「臭くてごめんね」。

自分の汚れたシャツを見せながら、アランは恥ずかしそうに言い、ニコッと笑いました。
よく見ると、鼻毛がボウボウで髭とうまいことジョイントしてます。

アラン:「今夜、遊びに行っていい?」
はにかみながら聞いてくるアランに「もちろん」と答えると、嬉しそうに山へ帰っていきました。

ナイスガイです。

 

さあ、釣りです。
ここもまた、水が少な~い!

まとまった雨が少ないせいか、慢性的な水不足のようです。
それでも、ポイントは多くあったので、釣果自体はなかなかのものでした。

さあ、釣りを終えて、ハットへ戻ることになりました。

 


あれ?
煙突から煙が出ているぞ・・

おかしいな、アランが来るのは夜のはずなんだけど・・
釣り人だったら面倒だなあ・・

扉を開けると・・

 

 

アラン。

正体は、アランでした。
すでに火まで起こし、お湯を沸かしてくれています。

僕らの姿を見て、子供のように無邪気にはしゃぐアランを見ると、こちらまで嬉しくなってきます。

手を振って、お帰り!と言ってくれるのですが、どうやら僕の名前を忘れたようで、「ごめん、何だっけ?」と聞いてきます。

「TAROだよ。」と言うと、
「OH~、HELLO!」と返ってきます。HELLOと勘違いされてしまいました。

何度言っても、TAROと分ってくれず、やがて大きく頷いて、「やっと分った!」と呟きました。

アラン:「よろしくね、T・・

 

 

TAKU。

おい、おっさん。全然違うじゃネーか。
けど、言い直すのが面倒なのでいいや、TAKUで。

アランは、ビールを呑みたがっているようで、もの欲しそうに袋の中をのぞいています。
「飲むかい?」と言うと、即座にコップを持ってきました。

ゴクゴクと美味そうに飲み干し、満足そうな笑みを浮べています。
さらに注ぐと、またすぐに無くなってしまう・・

相当、酒が好きなようです。

ビールは、あっという間に全て空になってしまい、残すところ馬部さんのウィスキーだけになってしまいました。

アラン:「あれ、ウィスキーもあるの?」

と、露骨に欲しそうです。
馬部さんが注ぐと、これまた速攻で胃に流し込まれました。

アラン:「あれれ、まだいっぱいあるなあ~」などと独り言を呟きながら、手酌で飲み始めました。
そして、気付けばスキットルの中も空っぽ!!!

馬部さんは、呆れて笑ってました。
いい気持ちになったアランは、菊田さんに尋ねました。

アラン:「ちょうど毛皮もたまった頃で、里へ下りようと思うのだけど、良かったら帰りのヘリに便乗させてもらえないかい?」

菊田さん:「いいよ」と快諾。

アランは大はしゃぎでした。
明日のピックアップの時間を確認すると、アランは再び森の中へと消えていきました。

 


今回のハットの暖炉は、オープンファイアと呼ばれるタイプ。
焚き火で調理ができるので、ワイルド味溢れててGOOD!

 


焚き火で焼いたステーキ。
アランも美味そうに食べてました。

 


一日、歩き回ったのでお腹空いた~!
肉がおいしいの何のって。

 


アランと僕。

 

食べ終わって一服しても、まだ釣りができそうな時間でした。
そいじゃイブニングの釣りでもしますかね!
ということで、菊田さんと二人で川へと向かいました。

当然、僕はガイドなので竿を持たずにお供です。

広いプールに着くと、数匹がライズしています。
こりゃイタダキですな!

ライズの位置を告げると、正確なキャストで、菊田さんは、あっさりと釣ってしまいました。

その内、一匹は50cmほどの良型で、二人とも大満足!
後は寝るだけですな・・

 

11月28日

山奥の二日目です。
今日は、ピックアップポイントまで結構な距離があるので、頑張って歩かなくてはなりません。

荷物を全部背負って川通しで歩きました。

馬部さんが魚を見つけて、それを菊田さんが釣り、その雄姿を僕がカメラで撮影。というやり方でした。

 


菊田さんは、ばっちりバックカントリーの釣りを楽しんだようです。
めでたし、めでたし。

 


ニュージーランドだなって思えるのは、森にある不思議な木を見た時でしょうか。

 


恐竜が出てきそうですよね~。

 


早々とセミも飛んでいました。
これが一杯飛ぶようになると、面白くなりそうですねえ。

 

ピックアップの場所まで歩いていく途中、藪の中から再び、アランが出てきました。
ザックはすでにピックアップポイントに置き、僕らを探しに来たようでした。

アラン:「TAKU、荷物を持ってあげるよ。鹿に比べれば、どんなに大きなリュックでも軽いぜ」

お言葉に甘えることにしました。
アランは、いい奴です。

でも、少し歩き始めると、一瞬目頭を押さえました。
大丈夫か?と尋ねると・・
あろうことか真剣な顔で、

 

 

「呑み過ぎちゃったみたいだよ。」

な~んて言ってます。
そりゃ、あれだけ呑めば二日酔いになりますわいな。

馬部さんと菊田さんが釣りをしている間、僕は英会話の勉強を兼ねてアランに色んなことを質問しました。

アランは、何でも知っていて、ゆっくりと分りやすい英語で教えてくれました。

 


アランが捕ったポッサムの毛。
この袋の中には250匹分のポッサム毛が入っているとのこと。

 

アランは、ヘリに乗せてもらう代わりにムルパラでビールを奢るよ!と言っています。

我々は、山を離れ、町へと戻りました。
そして、約束のビールを飲むためにPUBへ・・

刺青だらけの怖そうなおじちゃん、お兄ちゃんだらけですが、皆フレンドリーです。

アランの姿を見るや、皆、「アラン、帰ってきたのか!」と歓迎を受けています。
人気者のようです。

皆に、僕らのことを紹介するのですが、やはり当然のことながら僕の名前はTAKU。
もう、面倒なので、ムルパラではTAKUで通すことにします。

カウンターでビールを注文し、奢ってくれると言うアランはお金を払いに行きましたが、帰ってきません。あれ?

と、思っていると、アランは帰ってきました。
おっかしいなあ~などと呟いています。

話を聞いてみると、アランのカードは使えなくなっていたそうです。
結局、アランの分までを含めてビール代は馬部さんが払う羽目になってしまいました。

 


みんなで記念撮影!

 

アランは、本当に恐縮してしまったようで、「明日こそロトルアで奢るから!」と言ってききません。

8~9時にロトルアのPUBで会う約束をして別れました。

 

11月29日

菊田さんのNZ釣行も最終日です。
僕は留守番で、掃除と食事の支度です。

とびっきりの食事を作ろうと、長い時間を掛けて下ごしらえをしておきました。
今晩は、ロトルアの町へ繰り出す予定なので、早目にご飯にしましょ。

マッシュポテトのつまみ&ビールを先に出し、サラダ、メインのプロヴァンス風玉ねぎファルシというお洒落な料理を作っちゃいました。

結構、好評であったので、頑張った甲斐がありました!

そして、襟付きの服を着て、PUBへ。
プジョーで乗り付けました。
しかし・・

 

 

アランがいない!

もう帰ってしまったのか、それとも酔っ払って寝過ごしてるか・・
いやはや、最後までアラン節でしたね。

最後に会えなかったのは残念でしたが、僕たちにとても楽しい思い出をくれたアランには感謝しています。

 

11月30日

朝7時ロトルア発の飛行機で菊田さんは、お帰りになります。
また、NZに来ますよ!と、菊田さんの顔は晴々としていました。

僕にとって初めてのガイド。未熟者ゆえ、ご迷惑ばかりをお掛けしましたが・・

 


おっ、うちの庭に羊がいるぞ。
恐らく、近所の庭から逃げてきたのでしょう。

 


しばらく、放っておくと、なんと4頭に増えてる・・!?

庭で羊が草を食べている・・
日本では滅多に見られない光景ですな。

今回は、これでおしまい。