NZガイド修行日記 PR

第19話 この国の宝

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

思いのほか、早い内にプジョーが売れてしまいました。
どうしましょ、これからの釣り。

でも、幸いなことに僕にはトシさんという強い味方がいます。
これから帰国までの間はトシさんと一緒に旅することに決めました。

 

6月25日

プジョーが売れて、財布が急に重くなりました。

ああ~この安心感。
借金は無いし、あ~幸せ。

車も無くなって、どこへ行けるわけでもなし。
のんびり町を散歩することにしました。

まずは、オキーフに顔を出し、のんびりと皆でコーヒーを飲んでダベリ、そして、また町をトコトコ。

 


こんぐらい背が高くなったら、いいなあ・・(笑)。
オキーフ店内にて。

 

大好きな本屋さんへ行くと、ワゴン台に処分品が積まれていました。
日焼けしたとか、痛んでいたりする本の処分市ですね。

なんとその中にNZの釣り場ガイドブックが半額であったので買っちゃいました~!

北島編で、入国後すぐに買おうと思っていたのですが、馬部さんが持っていたので買わなかったのでした。

うわ~すげえ嬉しい。メッチャ安いじゃん。

 

余りにも嬉しかったのと、凄く暇だったというのもあって、トシさんに報告しようと再びオキーフに行きました。

トシさん、ほれ本買ってきたよー、安いじゃろー。

と、こんなことをしている場合ではありません。

今夜はトシさんがオークランドへ用事があって行くとのことで、僕も付いていくことにしているのです。

夕方、トシさんの仕事が終わると、一路オークランドへ。

 

久し振りの大都会。
地図を見ながら、遂に辿り着きました。

トシさんの仕事が終えるまで待ち、宿を探しました。

バックパッカーズホテルは見つからなかったので、少々高いですが、モーテルに泊まることになりました。

1泊100ドルもします!
いつもの5倍以上・・。
でも、一人頭50ドルなので、何とかなります。

だって、プジョーのお金がありますから。

 

お金持ちってこんな気分なのか・・(笑)。
と、しんみり思ったのでした。

晩飯は、近くのバーガーショップへ。
都会に出ると24時間営業が多いので助かります。

 

6月26日

朝、トシさんのアラームで目が覚めました。

昨晩は疲れていたので、風呂にも入らず、さっさと寝てしまったので、朝シャワーです。
チェックアウトぎりぎりの9時50分に出発。

ガソリンを入れてワイトモケーブへ。

ワイトモケーブとは、ツチボタルがいる洞窟で、ボートで真っ暗な天然の地下水路へ入り、星のように輝く蛍の青い光を楽しむというものです。

蛍といってますが、実際は気持ち悪い「何かの幼虫」です。
あまり興味が無いので詳しくは知りません。

ここは、NZでは有名な観光地で、ツアーでは必ず訪れる場所のようです。

今まで僕は観光らしいことはロクにしてこなかったので、トシさんが連れていってくれたのでした。
ありがとう、トシさん。

有名な観光地なだけあって、素晴らしい所でした。

さあ、これからツランギです。タウポ湖の南岸にある小さな町です。
1月に行ったバックパッカーズホテル「エクストリーム」に泊まることにしています。

 


この写真は夏に撮ったものです。

 

ツランギで何をするか?
もちろん釣りです。

この冬の時期には、世界中から釣り馬鹿が集まります。
産卵を控えた巨大な鱒が湖から一斉に遡上するからです。

相部屋にベッドを確保すると、シュラフを放り込み、買い物へ。

これから数日、この宿にいるので食糧を買い込むのです。
幸い、スーパーはまだ開いていましたので、いそいそと買い物を。

 

肉好きな僕ら2人は、迷うことなくステーキを買い物カゴに放り込みました。
肉は安いし。

明日は早起きして行くつもりなので、今日はビールを飲んでさっさと寝ちゃいましょう。

と、思っていたのですが。

さすが世界のトンガリロリバー。この宿にも多くの釣り馬鹿がいました。
リビングで仲良くなって、一緒に飲んだくれました。

彼らと情報交換をし、明日が待ち遠しいね、トシさん。と言うと、
トシさんはじっとしていられなくなったようで、

 

「これから行ってくるよ」

正気か、トシさん!?
今は冬だぜ?
夜だよ?

 

俺も行く(笑)。

こうして、急遽盛り上がって行くことになりました。
しかし、勇んで外へ出たものの、物凄く寒い・・。

南極に近いしなあ・・。
寒いよな、そりゃ。

震える手で支度を済ますと、宿から歩いて行けるメジャージョーンズというポイントへ向かいました。

マジで死ぬほど寒かったので、酔いはブッ飛びました。
一緒にいた白人の釣り馬鹿は、「お前らクレイジーだ」と言って喜んでたなあ・・。

 

ああ、寒い。
真っ暗な夜道を小さな懐中電灯を頼りにトボトボ歩き始めました。

こりゃ、1人じゃ怖いっす。

 

厚い雲が月明かりを遮り、かすかな光が水面に落ちています。
静かな夜です。

その静けさを聞き慣れた音が切り裂きます。

フライラインを振る音。

なんと先行者を発見!
「MR.クレイジー」は僕らだけではなかったのです。

横に入れてもらい、早速、竿を出しました。
しかし、釣れず。アタリも無し。

恐ろしく寒いのもあって帰ることにしました。

深夜、同室の若者を起こさないようにコッソリと戻りました。

 

6月27日

さあ、今日から本格的に釣りです!
早朝5時に目を覚ますと、神がかり的なスピードで支度を済ませて川へ。

しかし、考えは釣り馬鹿共通ということで先行者多数。
地元のおじさんたちは仕事前に少し竿を出すようです。

あちこち移動して試しましたが、どこもダメでした。
釣り人に尋ねると、みんな釣れていないとのこと。

しょんぼりして宿へ戻り、町にある釣具屋へ行きました。
情報を集めると、今年のトンガリロは不調とのことでした。

昨年の大水が原因なのかなあ・・。

 

夜は、実に面白い日本人バイク野郎と知り合い、楽しい時間を過ごせました。
ボロボロのバイクを掴まされたらしく、難儀なようでしたが、楽しそうでした。

 

6月28日

早起きするつもりでしたが、失敗。
ちょっと疲れが溜まっていたようです。

天気は、いかにも冬のNZです!という雨。
はあ~雨降ってるし、寒いし。

無精者の僕は、釣りをサボって流木の陰で雨宿りをしていました。

 

不屈の男トシさんは、黙々と竿を振り続け40cmほどの精悍な面構えをしたレインボーを1匹キャッチ。

凄い人だ、ホント。

 

秘密兵器のタイプⅥのシューティングヘッドが功を奏したんだと嬉しそうに話していました。

うう、僕も釣りたくなってきた。

なんだか今日は雨で体力を奪われてしまったので、自炊をする気力が無く、チャイニーズのテイクアウェイでチャーハンを食べることにしました。

僕を太らせてどうする気じゃい!というくらい大量に入ってました。

 

6月29日

よし、今日こそは!
と、自分でも驚くほど気合いを入れて車に乗り込みましたが、大雨。

まったく、1月に来た時も大雨食らったし。
どうもトンガリロとの相性が悪いようです。

でも、今日は最終日。
何としてでも釣らなくてはなりません。

 

土砂降りの中、泣きそうになりながら竿を振り続けること数時間。
ようやく報われました。

僕のフライに40cmほどのレインボーが食いついたのです。
ありがたや~。

トシさんも釣果を上げ、お互いにバンザイな一日でした。

 

日が落ちる前にロトルアに戻ろうよということで、移動。

いつもの宿の受付にはキャサリンが居ました。
「16号室、空いてるわよ~」と、ニッコリ笑って鍵をくれました。

我が家のように迎えてくれる素晴らしい宿です。

今日は旅人が少なく、夕飯は1人で寂しく済ませました。

 

6月30日

朝食を済ませ、暇なのでオキーフへコーヒーを飲みに行きました。
店の奥にあるスタッフルームに巨大なブラウンが転がっていました。

常連さんがロトルア界隈で釣った10ポンド(約4.5㎏)もある魚・・。

 


でけえっす。
何でも、剥製にするのだとか・・。

 


頭部をボカッと殴られたようで、目が飛び出てます。
そんなに睨むなよ~。

 

話すネタが尽きてしまったので、店を出て散歩へ。
ああ、車が無いと釣りに行けないなあ・・。

 


以前、外人さんらをガイドした時の写真が見つかったので、載せてみました。

スライドをライトボックスの上に乗せて、ビュアー越しにデジカメで撮ったので、枠がありますが・・。スキャナーがあればなあ・・。

 


ヒット~!
嬉しそうですね~。
釣れると、釣り人もガイドも同時にホッとします(笑)。

 

あまりにも暇なので、狭い町中をぐるぐる散歩。

 


市内にあるガバメントガーデン。
宿から歩いてすぐです。

髪の毛をどう縛っていいか知らないので、髪がちょっと変です。

 

あっ、いけねえ。
お金を下ろさなきゃ。

旅の後で、財布の中がすっからかんでした。
銀行までヒョコヒョコ歩き、ATMへ。

とりあえず200ドル下ろそうかなと、操作しました。
しかし、

 

 

お金が出てきません。

お~い!
何でやねん!!と思わずツッコミを入れたくなってしまいます。

しかも、レシートには引き落とし済みの金額になっています。
下の方にある、「御利用ありがとうございました」みたいな文面に腹が立ちます。

おっかしいなあ~ともう一度やってみると、残高は引き落とし前になっていました。
単純に機械の中にお金がなかったようです。

適当な国だなあ(笑)。

 

宿に戻ると、読書室というか、おしゃべり室にニールがいました。

なんかの拍子に合気道を教わることになり、(ニールは合気道のベテラン)狭い部屋でドタバタしました。

幸い、人がいなかったので、僕の無様な投げられ姿を見られずに済みました。

 

夕方、珍しく携帯にメールが届きました。
誰かと思ったら、1月にツランギで知り合ったアキコさんでした。

もうすぐ帰国で、途中ロトルアに寄るので会いましょうとのことでした。

 

夕飯は、先日知り合った帰国間近の日本人からもらったウドンを食べて幸せ。
久々のジャパ食は美味いです。

 

7月1日

ああ、帰国まで残すところあと1ヶ月となりました。

宿で知り合ったアイルランド人の男女3人グループと一緒に映画を観に行きました。
邦訳で「10日間で男を上手に振る方法」というタイトルだった気がします。

ラブコメで思ったよりも面白く、また英語も聞き取りやすかったので楽しめました。

 

昼ご飯は自炊しようと思い、キッチンへ行くと、フランス人のカップルと会いました。

陽気な彼らとはすぐに打ち解けられて、フランス式のランチをご馳走になりました。
パンの上にパルメザンチーズとトマトを乗せただけのシンプルなもの。
でも、美味しかったです。

同室の男性でシィルリア(そんな感じの名前、相変わらずフランス人の名前は聞き取りにくい)というフランス人と仲良くなりました。

癖のある英語を話す彼はユニークな奴で、僕にも分かるようにジョークを選んで楽しませてくれました。

 

7月2日

今日は、アキコさんがロトルアに来る日です。

待ち合わせ時間まで、結構あったので時間つぶしにCD屋をのぞき、NZアーティストの「ビック・ルンガ」のアルバムを買いました。彼女はかなりいい曲を歌います。

世界進出していて、結構売れていると聞きました。

 

久し振りに会ったアキコさんは、元気そうでした。
第一声が「髪伸びたね~」です。

1月は、まだ短かったのですが、今は伸び放題のボウボウでした。
(ちなみに帰国した時、「タイの船乗りみたい」と訳の分からんコメントを貰いました)

南島でも会う約束をしていたのですが、携帯電話が通じず、すれ違ってしまいました。
お互いの旅の思い出を語り合い、楽しい時間を過ごせました。

 

おしゃべり室でくつろいでいると、オークランドの大学生(NZ人)が話しかけてきました。

彼は以前、神奈川県の平塚に住んでいたそうで、妙にマニアックなことを話していました。

「塚駅の近くに美味い定食屋があって・・」とか。

 

陽気な彼は、ギターリストで、日本では「流しのギター弾き」というカッコ良すぎる仕事だったようです。

日本の民謡をパパッとギターで弾いてくれました。

その後、連続してNZで流行の歌をボロンボロン・・。
一曲ごとに人が集まるようになって、いつの間にやら暇な旅人が群がってました。

 

7月3日

アキコさんは、前のバイト先に顔を出すというので、僕は最近恒例となっている散歩をすることにしました。

キッチンで知り合ったフランス人のエリックと出かけることに。

ロトルアに住んでるくせに、有名な観光地であるレッドウッドフォレストへ行ったことがありませんでしたので、そこへ行くことにしました。

名前の通り、森です。
宿から歩いて片道40分ほど。

大きな木が真っ直ぐ生えて、昼でも暗くてひんやりしている素敵な森の散歩道でした。

エリックは、ひどい訛りの英語で、本当に何を言っているのかが分かりませんでした。
向こうも僕の英語が分からないようで、簡単なジョークを言うのにもエネルギーが要りました(笑)。

 

宿に戻ると、エリックが「おっ!」と短い声を上げて、日本人の女の子に近づいていきました。

彼女の方も同じリアクションだったので、多分、旅行中に知り合って再会したのでしょう。

 

話してみると、やはりそうでした。

最近、マイブームになりつつある映画鑑賞を持ちかけると、「行こうか」ということになり、3人でトコトコ映画館へ。

「チャーリーズエンジェル2」を観ることにしました。

それにしても、通り過ぎる人は皆、エリックを見ます。
マジで写真を撮っておけば良かったというほどのリアルなトカゲのデザインシャツは、かなりインパクトがあり、注目の的でした。。

あんなのどこで売ってるのでしょうかねえ。

 

7月4日

朝、アキコさんをバス停まで見送って、またまたオキーフへ。

NZは真冬ということで、町を歩く旅人が随分と減りました。
まあ、冬に来てもすることないしなあ・・(笑)。

オキーフへ行って、いつものようにコーヒーを飲みながら、おしゃべりしました。
ダグは、ゆっくりと話してくれるので最高の英語の先生です。

そのおしゃべりもネタが尽き、宿へ。

そこでまた暇そうにしていたニールと会い、ごく自然に合気道の実演。
当然、僕がやられる側です。

夜は帰国間近のオサダ君と知り合い、「あ~もうすぐ帰国かあ・・」としんみり酒を飲みました。

 

7月5日

今日は、久し振りに釣りに行こうぜということで、オキーフへ作戦を練りに行きました。

狙うは夜のタラウェラ湖を徘徊する巨大なレインボー。80cmくらいのも釣れるという怖ろしい湖です。

タイイングをしようと思ったのですが、なんと道具はトシさんの滞在先であるマイクの家に。

仕方なく、買うことにしました。
大枚20ドルをはたいて、必要な分を買い、夜に備えました。

静かな湖畔で黙々と竿を振ること3時間。
トシさんは執念の1匹。
僕は、無念のボウズ。

 

久し振りに真剣に釣りをしたので、疲れて早めにベッドへ潜り込みました。

そして、夜中。
自分の寝言で目が覚めました。

 

 

「なんかインフォメーションセンターで聞けるらしいですよ!」

と、物凄く大きな声で叫んでしまったので皆を起こしてしまったようでした。

おまけにトチッて言い直してしまい、寝言を大声で繰り返してしまったのでした。

言い直した時、これはひょっとして夢なのか!と、ガバッと跳ね起きると、僕以外の全員が驚いた目でこちらを見ていました。

すまん、みんな。

 

しかし、悪夢はこれからでした。

そのわずか30分後から定期的に、

 

 

ぷお~っ

という変な音が聞こえてくるのです。数分おきに・・(笑)。

どうやら火災報知器の電池が切れているか何かで、鳴っているようでした。

この晩、この部屋の利用者は、東洋人の寝言と、火災報知器の音のせいで寝不足になったのでした。

 

7月6日

朝、火災報知器のせいで寝不足となった我々16号室のメンバーは、ぐったりしていました。

気が短いドイツ人の銀行員マイケルは、凄い形相で受付へと向かったのでした。

 

そして、恒例の朝の散歩へ。

ここのところ同じコースを通っているので、毎日の微妙な変化が楽しめます。
ベンチの下に咲いている小さな花に気付いたり、プケコという青い鳥がヒョコヒョコ歩いているのを見たり・・。

散歩っていいものですね。

 

歩き疲れて宿へ戻ると、帰国を知らせる手紙を書くことにしました。

今夜は昨夜知り合った日本人の男の子2人、女の子1人と一緒に麻婆豆腐パーティーをすることになっているので、その準備をしなくてはいけません。

僕の担当は酒です。
箱ワインの在庫が少なくなってきたので、買出しへ行きました。

 

さあ、夜です。
キッチンが激混みする時間を避けて、先にシャワーを済まし、8時頃から作り始めました。

ちゃんとした豆腐は、アジア食品店で買えますが、とっても高いので、僕らはスーパーで簡単に手に入る「なんちゃって豆腐」と呼んでいる硬い奴を買うことにしました。

久々の味・・。

う~ん、おいしい。
でも、もうすぐ麻婆豆腐なんか毎日食えちゃう日本に帰るんだなあ・・。

なんかとても寂しいです。

本当はビザは10月まであるのですが、家の事情で帰ることになっています。

食後は、万年カルシウム不足のドイツ人マイケルと僕ら日本人4人でモノポリーをしました。

僕以外は全員が留学経験があり、英語ぺらぺら。マイケルに合わせて全て英語で会話しました。

マイケルの英語は聞き取りにくく、何度も

「ん?」

と聞き直したので、彼は苛々したようでした。

日本人軍団が要所要所で通訳をしてくれたので、何とかなりましたが・・。
随分と気を遣ったモノポリーでした(笑)。

マイケルは眠いということなので、僕らは箱ワインを抱えて飲んだくれることにしました。
若者が酒を持って語るとなれば、ネタには困りません。

みんなしっかりとした考えを持っていて、イラクの戦争からパジャマの柄に及ぶあらゆることについて議論しました。いや~面白かったです。

大学時代は、僕のアパートは溜まり場だったので、毎日のことでしたが、社会人になってからは無かったですものねえ。やっぱり若者は語らないといけませんね!

 

7月7日

昨日のメンツであるリナちゃんが、お土産を買うとのことだったのでロトルアを案内してあげました。

お土産屋さんに知り合いがいるので、紹介して安くしてもらいました。ここのオバちゃんは、シェリーと言って、ガイド修行時代からお世話になっています。

シェリーにもうすぐ帰国するんだということを話したら、寂しがってくれました。

そうかあ・・、もうすぐ帰国かあ。
改めて寂しくなったのでした。

 

今晩もみんなでご飯を食べることにしています。
何を作ろうかなあ・・。

マイケルに「一緒にどうだい?」と聞いてみましたが、英語が下手な僕が嫌いなのか、
「いいよ」と素っ気無くかわされました。

ちょっとショック…。

 

そして、今夜も語り合いました。
なんと深夜2時まで。

彼らとの語り合いは、今夜が最後です。
僕は明日からトシさんと釣り行脚へ行くことになっているからです。

彼ら3人は、もう1泊ロトルアにいるそうです。
あ~もっと一緒にいたかったなあ・・。

 

7月8日

うっかり寝坊してしまい、チェックアウトをぎりぎり済ませました。

荷物を抱えてオキーフへ向かいました。
3人が見送りに来てくれます。

たった数日間でしたが、何年も一緒にいる仲間のようで、とても素敵な出逢いでした。
みんな元気かなあ・・。

(帰国直後は頻繁に連絡を取り合っていましたが、時の流れと共に疎遠になっていく・・。急にみんなに会いたくなってきたので、このページを作り終わったらメールをしようと思います。)

 

さあ、お別れだよ~と思ったら、トシさんが
「急な仕事が入ったから、もう少し時間をくれ」とのことです。

ラッキー!
そいじゃ、みんなで映画でも行くか!ということになり、出かけることにしました。

何観ようか…。

 

3人はチャーリーズエンジェル2を観たいと言います。

 

 

それは観たんですけど…

と、言いたかったのですが、

「うわ~俺、観たかったんすよ~」
「わたしも~」
「面白そうッスね」

 

「いや~俺も観たいなあ…」。

うう、嫌って言えないッスよ、あの状況じゃ。

さすがに2回観ると、英語もバッチリ聞き取れました。
めでたし、めでたし。

 

そして、今度こそ涙のお別れ。

がっちりと握手をし、元気でね!
出逢いが素晴らしい分だけ、別れが寂しくなりますが・・。

もう慣れたつもりだったのですが、やはり寂しいものです。

 

みんなそれぞれ、目標があり、それに向かって頑張っています。
お互いに上手くいくといいなあと、思うのでした。

 

夕方、トシさんの車に荷物を詰め込むと、いざ出発!

今晩は、オークランドで一泊し、その後は未だに足を踏み入れたことが無いノースランドへ。

ノースランドとは、オークランドよりも北にある常春の土地です。

 

7月9日

名前が可愛らしくて気に入ってしまい、ケリケリという町に泊まることにしました。

バックパッカーズより、ユースホステルの方がいいよと聞いていたので、そこへ。

ツインしか空いておらず、1人1泊24ドルを支払いました。

せっかく海に来たのだし、釣りをしようぜ!ということで宿の主人に聞くと、良い入り江があるよと教えてくれました。

喜び勇んでフライロッドを握り締め、現場へ急行。

しかし、結局、カスリもせず。

 

帰りに町中を走っていると、桟橋に親子連れの釣り人がたくさんいました。
何が釣れるんだろう?と思い、車を停めて覗いてみました。

地元民のバケツの中にはベラの仲間のような魚がたくさん入っていました。
おお!釣れてるじゃん。

すかさず仲間に入れてもらい、フライロッドで釣り始めました。
フライは、エッグ。
着水し、上下にしゃくると、ブルブルとアタリます。

 

おお!食ってる。

そして、ついに釣り上げました。
バケツの魚と同じでした。

それからすっかり2人で夢中になり、暗くなるまで釣りまくりました。

 

宿へ帰ると、なんと見たような顔が!

4月にロトルアの宿で一緒だったヨウコさんでした。
本当に狭い国ですね・・(笑)。

ファームステイが終わり、現在は旅行中とのことでした。

 

7月10日

今日の目標地点はコロマンデル半島の北部です。
昼前に出たのですが、かなり遠くて夕方の5時くらいに着きました。

しかし、宿が決まっていません。

インフォメーションセンターに転がり込むと、なんとか予約が取れました。
コルヴィルという小さな町です。

しかし、空き部屋が無くて、シングルルームを2人で借りることになりました。
トシさんは長身なのでベッドに寝てもらうことにし、僕は壁の隙間を見つけて潜り込みました。

それにしてもボロです(笑)。
ロトルアの宿とは大違い!

古い農家を改造したのですが、扉は閉まらないし、ネズミは多いし・・。
でも、結構こういうの好きだったりします。

これから帰国までの間、長いこと一緒になるリュウジ君と、ここで知り合いました。
大学3年目を休学し、ワーホリで来ているとのことでした。

釣りをやったことが無いという彼に何とかして布教活動をせねば!という意味不明の使命感に駆られまして、無理矢理、彼を翌日、釣りへ連れて行くことにしました。

 

7月11日

慣れてしまえば、この凄まじい宿も都のようなもので、すっかりと馴染んでしまいました。
今日は朝から3人で釣りです。

7時半に起きて弁当を作り、いざ出発!
の前に・・。

延泊の手続きをしなくてはいけません。
受付に行くと、張り紙がありました。

「農作業に出ているので、チェックアウトの場合は、鍵をそこへ置いておいてください」

なんという不用心さ。
大丈夫か?と心配になりますが、平和な国ニュージーランドの田舎では珍しいことではないようです。

でも、延泊の手続きができません・・。

 

近くの牧場を探すと、犬を連れてバギーで走り回っているオバちゃんがいたので、尋ねると、

「あ~OK。伝えとくわ」

よし、宿は解決(笑)。(いいのだろうか、こんなに適当で・・)
釣りへ行くぜ!

 

道中、雑貨屋さんがあったので、餌の冷凍イカとコマセのカツオの切り身が入ったバケツを買いました。

久し振りの刺身を狙っているので、何としてでも釣らなくてはいけません。

トシさんは餌釣りが嫌いなのか、フライオンリーとのこと。
僕が餌釣り担当となりました。

2ドルショップで買った包丁で冷凍イカをザクザク切り、投げ竿でぶん投げます。

遠くにドッボ~ン!
糸ふけをとってアタリを待ちました。

リュウジ君には僕のフライロッドを貸しました。
フライにイカの切り身をぶら下げて足元に垂らします。

トシさんは、ラインバスケットを腰に巻き、テトラの先端まで行って、雄々しく竿を振っていました。

波がザッバ~ンと掛かりながらの釣りなので、海の男ってな感じでした。

 

早速、僕にアタリがありました。
しかし、小さなカウアイがつついているだけのようで、フッキングしません。

生臭いのが嫌いなトシさんは、
「タロちゃん、すまんがコマセをお願いします」

「あいよ~」
僕は、イカの切り身とカツオの肉をバケツの中でこねくり回し、それをフライがある辺りに次々と投げ込みました。

早速、餌盗り軍団が群がってきます。

そいつらを狙っても面白いのですが、今日の狙いは刺身で食える大きさの魚なので無視。

 

しかし、釣れません。
釣り用のカレンダーを見ると、今日の潮は悪いらしく、BADと書いていたのを思い出します。

結局、7時間ほど無心に振り続けましたが、反応が今ひとつだったので刺身は断念しました。

何でもいいから釣りたい!
それと、リュウジ君に釣らせたい~。
というのがありまして、3人とも狙いを餌盗りの小物をターゲットにすることにしました。

トンガリロで使い切れなかったエッグフライをコマセで寄せた小物の群れに放り込み、ピコピコ誘うと、簡単にパクリ。

おお~釣れた!
リュウジ君も大喜びです。
やっぱり最初の釣りは釣れなくちゃ面白くありませんからね。

 

明日が本命の釣りなので、今日は早めに引き上げて宿でのんびりしました。

 

7月12日

チェックアウトを済ませると、隣村まで移動しました。
予約を入れてあったボート屋へ挨拶に行きます。

あれ、受付には誰もいません。
猫がニャーと啼きながら歩いてきました。
何もやるもんないぞ・・。

貧相な格好の僕らを見ると、
「あっ、こいつら何も持ってないな」
と、見切ったようでスタスタ去っていきました。

呼び鈴があったので、鳴らすと違う棟からオバちゃんが出てきました。

「こんにちは。今日、予約をしていたトシとタローですが」

「はいはい。よろしくね」

「よろしく~」

 

出船は、午後だったので時間はたっぷりあります。
目の前に釣れそうな磯があったので、暇つぶしにフライロッドを振りに行きました。

コマセは昨日、使い果たしたので今回は運次第。

しかし、結局何の反応も無かったし、あまりにも天気が良くて昼寝日和だったので、イグアナのように磯場で日光浴をしました。

さあ、時間になりました。
船に行くと、すこぶる愛想の悪い船長マークさんがいました。

「餌釣りとフライでやるんだな?」と念を押してきました。

必要以外はペラペラしゃべらねえぜ、という性格が見て取れます。

今回は、僕は餌釣り、トシさんはフライ。
さあ、無事に刺身をゲットできるか・・。

トラクターのような車で船を牽引し、海のスロープへと運びます。
そして、出発!

透明度が高い真っ青な海と、同じくらい青い空の間を滑るように船は進みます。

やがてポイントへ着きました。

マークが、魚の活性を上げるべく、冷凍のコマセ袋を海に投げ入れました。
袋にはロープが付いており、引っ張ると餌が少しずつこぼれるようになっています。

自分で餌をつけて、自分で投げたかったのですが、マークが全てやってしまいます。

タックルはグラスの短いスピニングロッドでラインは鬼のように太いナイロン、針は鯛針を2つ。
餌のイワシを慣れた手つきで付けました。

そして、ぴゅ~ん。どっぼ~ん!

日本の釣りと違うのは(僕が知らないだけかもしれませんが)、投げた後にドラグをフリーにして、ラインを手で引っ張り出し、どんどん流していく所です。

潮に乗せて流していると、いきなり、

 

 

ブルブル、ズガン、ゴン、ゴン。

と、来ます。
うわ、来た!

ラインは潮に引っ張られているので、常に張った状態になっています。
ドラグフリーを解除し、強く竿を煽ると、力強い魚の躍動が手元に伝わってきます。

これは何だろう?
すっげえ、強いけど・・。

ドキドキします。
ここ数年間はフライばかりだったので、全く違う釣りをやると、面白くてたまりません。

 

結構、強引にやり取りしてもグラスロッドは、よく曲がってくれて頑張ってくれました。
釣れたのは・・・・・

 


スナッパー(鯛)です。

おお、鯛が釣れたぞ!
いとも簡単に。

それからは連発です。
もう要らないというほど釣れました。

刺身にする分だけ持って帰ることにしていたので、数匹をキープ。

 


スナッパー、釣れ過ぎ・・。
生まれて初めて鯛釣りをやりましたが、これは実に面白いですね。

 

一方、フライのトシさんは・・?

もちろん釣れてます。
ただ、フライだと手返しが悪いので尾数は望めませんが。

わずか3時間ほどで数年分の釣りを楽しめました。
あ~満足。

 


ボートと一緒に記念撮影。

 


スナッパーの他に、40cmくらいのGTっぽい魚、60cmくらいのカウアイ(美味しくないのでリリース。でも引き味は一番面白い)、などなど。

 


釣りの後は、解体作業。
とっても寒いし、慣れていないので時間が掛かってしまいました。

 

取った内臓は、すぐ後ろにある川へ放り投げます。
すでにウナギが待っていて、あっという間に平らげてくれます。

面白いですよ、解体所のライトを点けると、すぐに寄ってくるんです。

 

さあ刺身もできましたし、いざロトルアへ!
夜遅くに着いたので、この日はマイクの家に泊めてもらいました。

そして待望の刺身・・。
薄口醤油で作ったお吸い物・・。

あ~日本人で本当に良かった!

 

7月13日

昨晩は3時過ぎまで起きていたので、かなり眠いです。

今日はトシさんに誘われて子供らにフライフィッシングを教えるボランティアに参加することになっています。

朝のコーヒーを飲んで、ロトルアの郊外へ行きました。

 

うわ~いっぱい来ています。
たくさんの子供達がキャーキャーはしゃいでおり、賑やかです。

 

会場にはすでにオキーフのマルコムがいました。
長身の彼は、小さな子供を上から抱きしめるような格好で釣りを教えていました。

ヒットし、竿がガンガンと絞り込まれ、子供の顔に笑顔が浮かんできます。
マルコムはニッコリ笑って、子供らの頭を撫でていました。

彼自身、子供の頃、このイベントに参加してフライを覚え、年齢制限から外れると、指導者の立場になったのでした。根っからの釣り好きなのです。

 

このイベントの流れを説明します。

この国では鱒の売買が禁じられていますので、釣堀がありません。
通常ですと、釣りを覚えるためには危険な川へ出かけなくてはいけないのです。

自然、大きくなってからでないと釣りができなくなってしまいます。
しかし、そこは鱒釣り天国ニュージーランド。

小さな頃から、釣りのことをしっかりと教え、マナーを覚えさせます。

彼らの中では、それが当たり前という認識になり、そのまま大人になって、循環していくのです。
日本とは全く違います。

鱒釣りをウリにしている観光国という背景もあるかもしれませんが、徹底した考えは大いに参考になります。

流れは以下のようです。

①釣りのライセンスを買う
ここから始まるのが凄いですよね。
釣り券を持たずに釣りをすると、厳しい罰則が待っていますし、まずはここから教えます。
子供は2ドル(今イベント特別入漁料)を払い、次のステップへ。

②キャスティングレッスン
小難しいことは言わずに、本当に押さえなくてはいけない基本中の基本だけを教えます。
初めてフライをやる子供に肘が90度で、何だかんだと言っても、嫌いになるだけですから。
少し投げられるようになると、次のステップへ。

③実釣
いよいよ釣りです。

このように後ろから一緒に竿を持って振ります。
取り込みまで一緒にやるわけです。

 

④魚を絞める
この国の釣り、特に庶民の釣りは食べて完結します。ゲームとしてする人間はリリースします。
川ごとによって細かく決められたルールさえ守れば持ち帰っても良いことになっています。


子供によっては、釣りよりも殴ることの方が好きな場合もあり、色んな子供がいるんだなあと少し勉強になりました(笑)。

 

ただでさえ英語が通じにくいのに、幼児言葉なので殆ど言っていることは分かりませんでしたが、喜んでもらえたのは伝わってきました。

ただ釣らせるだけでなく、マナーも同時に覚えさせていく・・。

小さい頃からのすり込みになりますから、大人になっても当然の考えになるわけで、そして大人が同じように子供達を教育していく・・。

釣り場で会う人間がみんなナイスガイであるのは、ここなんだなと思いました。

よし、この考えを是非とも日本でも広めたいと思いました。
よ~し、帰国したら僕はこの考え方を広めるぞ!

今の日本の釣り事情はマナーも何もあったものでなく、ムチャクチャですけど、これから始める人達にしっかりと伝えていけば、いずれは日本の釣り人のモラルも向上し、自然に真正面から向き合える人間が増やせると思うんですよね。

ああ、山が壊されていく・・。
木を植えなきゃ!と自然に思える人間を増やしていくことが、遠回りに思えるかもしれませんが、自然保護にとって一番の近道になるのでは?

と、不肖・中村太郎は思ったわけでした。